今回は英語の発音のちょっとしたコツ、Tの発音について書いてみます。
英語の発音って難しいですよね。スペルと実際の発音が全然違っていて、どうやって発音しているかまったくわからない時があります。
なんだかとても謎で、英語の発音は自分には無理だと絶望したり。
その中の一つが、ここで説明するフラップTサウンドと呼ばれる発音です。
英語の発音では、T を 小さなD の音で発音することがあります。この D の発音がフラップT サウンド。
どんな時にこの変化が起こるかというと、例えば water, pretty, beautiful, city にあるTの音です。他にも無数にあります。
自分で実際に発音してみると、あー、あの不思議な発音はこれか!と思う人も多いと思います。わかってしまうと、意外と簡単。
それでは具体的に見てみましょう。
フラップTとは?
フラップTはアメリカの方言
フラップTはアメリカ英語の特徴です。イギリス英語を標準英語と考えるなら、方言みたいなものです。
イギリスやオーストラリアなどの他の英語では、基本的に T の音は普通に T で発音します。
しかし最近はアメリカ英語の影響が全世界に波及していて、イギリスやオーストラリアでもフラップTで発音する人が増えています。
アメリカ英語を話す人は、英語話者全体の7割くらいです。
それに加えて他国でもフラップTで発音しているということは、英語話者の大半がこのフラップTで発音していることになります。
数で言えば、フラップTがマジョリティーなわけか。単なる方言とも言えなくなってるな。
それでは具体的に、フラップTがどんな風に発音されるのかを見てみましょう。
まずはよく発音方法が話題になる水の water を取り上げて、フラップT がどんな発音になるか見てみます。
water で具体的な発音を解説
water は、日本でも外来語でウォーターとして使っています。
しかし日本語のウォーターという発音はイギリス英語に近い発音で、アメリカ英語とは違います。
アメリカ英語の場合は T の音が D へと変化します。
初めてアメリカ英語の water を聞くとあまりにも自分の知っているウォーターとは違うので、びっくりしますよね。
何これ!?どうやって発音しているの?
ちなみにアメリカ英語の water の a の発音も、イギリス英語とは違います。
下の動画でアメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語、ウェールズ英語でのウォーターの発音が聞けます。
今回はフラップT の話なので、 water の後半の ter に注目します。
この ter はイギリス英語ならそのまま ter と発音します。ウォーターのターの部分ですね。
しかし、アメリカ英語だと ter を der と発音します。これがフラップTと呼ばれる発音です。
T が D ってどういうことよ、、、、
下の動画がフラップTを良く説明しています。
動画ではいろいろと解説していますが、細かいことは考えず、T が小さい D の音になるということだけを意識して、発音を良く聞いて真似してみてください。
英語の解説が良くわからない場合でも、動画後半の発音練習の部分だけでも挑戦してみてください。自分でやってみるとフラップTがよく理解出来ると思います。
アメリカ英語の water の a は father の a と同じ
この記事の本題ではないですが解説しないと気持ち悪いので、ついでに water の前半の音節 wa の発音についても書いておきます。
イギリス英語の water の wa は戦争の war(ウォー wɔːr) と同じ発音です。
それに対して、アメリカ英語の water の a は father(ファーザー ˈfɑː.ðɚ) の a と同じ発音になります。
water の発音を無理やり日本のローマ字風味で書いてみると、
となります。
さて、ではもう一度、アメリカ人ネイティブのwaterの発音を聞いてみましょう。
どうですか?理屈を知っていると理解も早いですよね。
ダメ押しで、下の動画では、water の発音をイギリス英語とアメリカ英語で比べています。
フラップTを含む単語
それでは他に、どんな単語にフラップT があるのでしょうか。
フラップT が入っている単語は下記の通りです。ここに書き出した単語はほんの一例で、他にもたくさんあります。
上の単語を、フラップTを意識して発音してみると、今まで不思議に思っていた発音が、おぉ!これがあの変な発音か!となりませんか?
wader, preddy, cidy, kiddy……なるほどねぇ。確かにアメリカ映画やアメリカ音楽に出てくる発音。なんか英語の発音が上手くなった気がする。
リンキングでもフラップTになる
単語同士が連結するリンキングでも、フラップT になります。
例えば、
のような感じです。もちろん他にもあります。
リンキングでのフラップTは、下の動画が参考になると思います。
英語のリンキングが良くわからない場合は、以前書いた下記の記事を読んでみてください。
発音がフラップT になる条件
英語をたくさん聞くと、経験則でどこがフラップTになるのかは大体わかります。
どの T がフラップTになるかを簡単に説明すると、
英語全体の発音として、影響の少ない T が D に変化する
です。
T を D に変化させることで、英語や単語全体の印象が大きく変わってしまうものはフラップTにはなりません。
例えば teach や passport のような単語ですね。
teach の T が D になってしまったら、発音がディーチになってしまって、全然違う単語になってしまいます。
そういうことにならないように、 pretty のように単語の中程にある T に限りフラップTになる訳です。
または attack のような、T にアクセントがある場合も D には変化しません。
もしこの T を D に変化させてしまったら、アダックになってしまい、全く別の単語になってしまいます。
ですので、単語の中程にある、全体の発音としてあまり影響の出ない T だけが D に変わり、冒頭や一番後ろにある T は T のままです。
これだけ知っていれば大丈夫。
ネイティブもフラップTになる細かい条件なんて誰も知りません。すべて経験則。
しかし言語学風に分析すると、もっと細かくフラップTになる条件というものはあります。それは下記の通りです。
ちょっとややこしいですよね。
母音とかdark LとかR controlled vowelとか、発音に関してある程度の知識がないと、
なんのこっちゃ、、、
だと思います。
なので、最初に書いた概念
単語全体の発音として、影響の少ない T が D に変化する
をなんとなく覚えておいて、実際の英語をたくさん聞きながら経験則でフラップT を覚えていくのが楽ですし、効率的です。
ネイティブも理屈ではなく経験で覚えていきます。僕もそうです。
実際はそれほど難しくないです。
別にフラップTが発音出来なくても相手はわかってくれるので、出来る範囲で良いと思います。
まずは「フラップTという発音方法がある」ということを知ることが大切です。
我々はフラップT を使うべきか
これはどちらでも良いと思います。
上の動画でも言っていますが、T で発音すればイギリス風味で、 D で発音すればアメリカ風味になります。
ただ、より自然な英語を目指すなら、あなたの英語をどちらかに統一した方が良いでしょう。
アメリカ英語を目指しているならフラップT で発音した方が自然でしょうし、イギリス英語を目指しているなら T は T で発音した方が自然です。
dater と data についての小話
以前、アメリカのシンガーソングライター、テイラースウィフトのコンサートを見ていて、テイラーのMCで psycho serial dater girl という言葉が出てきました。
Media have had really wonderful fixation on kind of painting me as like the psycho serial dater girl.
「無差別にテイラーが男とデートしまくっている」というマスコミのゴシップ記事について話しているときに、自分のことを自虐的に psycho serial dater girl と呼んでいます。
psycho は気の狂った、serial は serial murder のように使って連続殺人の連続、daterはデートをする人。
無理やり日本語にすると「猟奇連続デート魔女子」みたいな感じでしょうか。日本語に翻訳しても面白い響きです(笑)。
なぜこんなことを突然書き始めたかと言うと、daterという単語が面白いと思ったからです。
dater という単語はデートするの date が元の単語。
dateという単語の T はフラップT になりません。普通にデート(deɪt)です。
しかしそこに er を付けます。
er はR controlled vowel なので、date の t がフラップT になる条件が揃います。
テイラーはアメリカ人ですから何も考えずに自然と T が D へと変化し、dater が dader となります。
ここでふと気がつきました。
もしかして dater の発音は”情報”の data と全く同じ?
dataは、日本でもデータとして使っているお馴染みの単語。データを日本語に訳せと言われても
データはデータでしょ。
と言いたくなるくらい日本語に定着しています。
dataはデイタァやダータァなど、いくつか発音があって面白い単語なのですが、アメリカ英語だと T がフラップTで発音されるのでデイダァのようになります。
ワクワクしながら辞書で調べてみると、ビンゴ!
*辞書の発音記号ではフラップTは表記されません。
意味とスペルは違うけど、発音が全く同じ単語を homophone というのですが、dater とdata は見事に homophone でした。
英語では homophone はかなり貴重なので、隠されている財宝を見つけたような気分。
homophone については以前記事を書いたので、興味ある人は読んでみてください。
【homophones】スペル違うのに同じ発音の英単語【同音異義】
0:22くらいで psycho serial dater girl と言っています。興味のある人は聞いてみて下さい。
まとめ
いかがだったでしょうか。
英語の発音には、学校の授業では習わないけど必須の知識というのは色々とあります。フラップTもその一つ。
自分でフラップTを発音しなくても、知識として知っていればリスニングの時に役に立ちます。
自然なアメリカ英語を話したいのであれば、自分でも積極的にフラップTを使ってみましょう。
フラップTを自然と使いこなせば、なんとなくスピーキングがワンランク上に上がったような気がして、英語を話すのも楽しくなります。
お試しあれ。
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