アカデミー作品賞を受賞した Birdman からのワンシーンです。
Emma Stone 演じる Sam のこのシーンはとても印象的です。誰かが泣いたりわめいたりすれば注目を集めるわけですが、それにしても鬼気迫るこの Emma は素晴らしい。
Emma Stone はとても注目されている俳優ですが、監督にアクション!って言われてパッとこういうことが出来るからとても価値が高いわけです。いやぁ、本当にすばらしい。
彼女のエネルギーが凄いのでついそこに注目してしまうのですが、それでは具体的に彼女はいったい何を話しているのかを見てみましょう。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)”Relevant” シーン
このシーンの前置きを書くと、このふたりは親子で Michael Keaton 演じる主演の Riggan は父親で、Riggan はかつて Birdman というスーパーヒーローものを演じて有名になりました。
あれから長い時間が経過し、今では消えゆく存在。今度はもっとシリアスな俳優として名を馳せたいと自ら劇団を立ち上げ頑張っていますが、なかなか上手く行きません。
父親がそんな風なので娘はグレてしまったらしく、麻薬中毒になったこともあります。今は父親のアシスタントをしていて、芝居を宣伝するために今時のSNSを使ったマーケティングを提案するのですが、ことごとく父親に拒絶されます。
そんな折、父親に隠しておいたマリファナが見つかってしまい、この後に及んで俺の芝居をぶち壊すつもりかと娘にキレます。しかし逆ギレした娘がいつまでも夢を追う父親に怒りをぶちまけ反撃するというシーンです。
YouTubeの自動字幕がなかなか良いので、必要な人はONにしてください。あれ?なんか字幕おかしいぞ、と思った時は僕の書き起こしを見てみてください。字幕の足りない部分を書き足しています。
Birdman(2014) – Relevant scene
スクリプト
RIGGAN: This is my chance to finally do some work that actually means something.
SAM: Means something to who?
You had a career, Dad, before the third comic book movie, before people started to forget who was inside the bird costume. You’re doing a play based on a book that was written 60 years ago, for a thousand rich, old white people whose only real concern is gonna be where they go to have their cake and coffee when it’s over. Nobody gives a shit but you.
And let’s face it, Dad, you are not doing this for the sake of art. You are doing this because you wanna feel relevant again. Well, guess what, there’s an entire world out there where people fight to be relevant every single day. And you act like you doesn’t exist!
Things are happening in a place that you ignore, a place that by the way has already forgotten about you. I mean, who the fuck are you!
You hate bloggers. You mock twitter. You don’t even have a Facebook page.
You’re the one who doesn’t exist.
You’re doing this because you’re scared to death, like the rest of us, then you don’t matter.
And you know what? You’re right. You don’t. It’s not important, ok? You’re not important.
Get used to it!
Dad…
解説
who the fuck are you!
疑問詞の直後に the fuck を挿入して強調するのは日常会話でもよく聞くやり方で、いわゆる放送禁止の F word です。ですので、R指定の映画でないと聞けないですね。
英語でも「何?」と聞くときに単純にWhat?ということがありますが、強烈な怒りが入った場合はwhat!!では短か過ぎるので
となります。What! the! fuck! とそれそれに力が込められますね。
強烈に怒っているときは日本語でも「なに!」だと短過ぎるので「なんだよ!」とか「なんだっていうんだよ!」と力を込めるために少し長くしたいところなので、それと同じような感じです。
the fuck よりも少し意味を弱めた the hell もよく使われていて、
のように使えます。
the fuck や the hell を抜きに英語は語れないですが、英語学習者がこういう言葉を好んで使うのは逆にダサいので、ネイティブ並みに話せるようになるまでは使わない方がいいです。ただし、ジョークとして笑いを取るためであればあり。
I don’t give a shit
ここでは Nobody gives a shit ですが、一番多いのは I don’t give a shit という使い方です。
フランス人の女友達がこのフレーズを得意げに使っていたのですが、I give a shitと間違えて使っていました。指摘するのもかわいそうだったので放置しましたが。ちなみに可愛い女の子だったのでshit と言われると日本人的にはビクッとしますね(笑)。
気にしないというのは、なんとなくイメージとしてうんこを投げつける感じで僕の友達のように I give a shitと考えがちですが、英語での shit は実はそんなに悪いわけではなくて、良いことでも悪いことでも、両方の意味で shit は出てきます。
この場合の shit はモノ、関心というような意味合いで、自分の関心は与えない→気にしない、という感覚ですね。ですので、否定形の I don’t give a shit になります。
but
このシーンで使われている but は面白い but で、僕の印象に強烈に残っているのはスピルバーグの映画プライベート・ライアンの名シーン、オマハビーチでのアメリカ軍の上陸シーンです。
ここで隊長を務めるトム・ハンクスが部下に What’s the rallying point?(どこで集合しますか?)と質問されます。 Anywhere but here!!(ここ以外のどこでもだ)と答えるのですが、この時の but は一生忘れる事はないでしょう。
というのは、下のシーンを観てもらえるとわかりますが、予想外の集中砲火を浴びて誰一人として生きて帰れるとは思えない状況で集合場所もクソもないわけです。とにかくここから移動して前に突き進むしかない状況です。その状況が Anywhere but here!! に現れているわけです。
最後に
このシーンでの娘 Sam は怒鳴り散らしていますので、やたらと強調文が出てきます。
英語の世界全般に言えますが、人や世界を動かすにはとにかく「言葉」が大事で、人にインパクトを与えるような言葉や皮肉のような言い回しが英語にはたくさんあります。この辺は礼儀正しく言葉少ない、言わなくてもわかるだろ?という日本人と大きく違っていて英語の面白い部分です。
しかし、ここでの Emma Stone のパフォーマンスは素晴らしいです。彼女の表情の変化は自然で吸い込まれます。僕が相手役の Michael Keaton で目の前であんな演技をされたら、自分の役を忘れて拍手しちゃいそうです。
ここでの Sam の発言内容はある程度歳を取りながらも、頑張って何かに挑戦している人に対しては辛い言葉かもしれません。僕も似たようなモノなので本来ならグサッとくる言葉なのかもしれませんが、意外とそうでもないですね。
なんでですかね。
多分諦めてしまった後に訪れる虚無感というか、絶望感がわかるからかもしれません。成功しなくてもやり続けることが出来れば生きていけるという感覚がわかるから、それほどこたえないのかもしれませんね。
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