Leonardo DiCaprio 主演の映画 The Beach からのワンシーンです。この映画はタイを旅している主人公が、偶然手に入れた地図をもとに幻のパラダイスを探す旅と、そこでの出来事の物語です。
僕はこの映画がかなり好きで、何度も観た映画です。音楽も好きでサントラもよく聴いていましたし、英語の原書も読みましたし、実際に撮影場所になったタイの島にも行きました。
特に前半のパラダイスと言われているビーチにたどり着くまでが好きです。どうして好きなんでしょうね。よくわからないですが、何か自分が求めているものがそこにはあるのかもしれません。
これをきっかけにというわけではないですが、この映画の後押しでさらに旅をすることに拍車がかかった気がします。
今回取り上げるのは、バンコクからビーチへの旅の途中でのシーンです。特に主人公リチャードの「恋することについて」の語りが面白く、細かいニュアンスが知りたくて英語のセリフを訳した思い出があります。
ザ・ビーチ “Photographing the Night Sky” シーン
この映画はアメリカ人の Leonardo DiCaprio 演じる Richard がフランス人カップルを誘って3人で幻のビーチを目指し、そこでしばらく生活するという物語です。
このシーンに出ている女性がフランス人カップルの女性の方で Virginie Ledoyen 演じる Françoiseなのですが、その Françoise が旅の途中のビーチで星空を写真に撮っています。
映画の冒頭から、実は Richard は Françoise に気があるようです。しかし Françoise には彼氏がいるので、とりあえず彼女のそばにいるだけで満足。
気がつくと Françoise はひとりで星空の写真を撮っています。ちょうどロマンチックな状況だし近くに彼女のボーイフレンドもいないので、Richardは何か気の利いた事を言いたくなり行動に移します。そして彼女に手痛い一撃をもらいます。
このシーンの波の音と音楽がとてもいいですし、後半の Richard の「恋について」の語りがとても面白いです。僕はこの語りでHaze of infatuationという英語を覚えました。
The Beach (2000) – Photographing the Night Sky scene
スクリプト
Françoise: Have a look. One night, I will get the perfect photograph. Hi.
Richard: You realize that…in the eternity of space…there’s probably a planet out there, right…just like this one… where another you is photographing back down towards us. I mean, essentially, you are photographing yourself in a parallel universe.
Françoise: Incredible.
Richard: Yeah. I mean, there are infinite worlds out there, you know? Where anything you want it to happen… does happen.
Françoise: Richard, you know something? This is just the kind of pretentious bullshit that Americans always say to French girls so they can sleep with them.
Richard: Oh, God… sorry. I thought I was doin’ pretty good.
Françoise: It’s just the sky, Richard. Let’s try.
Richard: Yeah. Idiot.
Françoise: Un, deux, trois… quatre.
Richard: When you develop an infatuation for someone, you always find a reason to believe that this is exactly the person for you. It doesn’t need to be a good reason. Taking photographs of the night sky, for example. Now, in the long run, that’s just the kind of dumb, irritating habit that would cause you to split up. But in the haze of infatuation, it’s just what you’ve been searching for all these years.
解説
最後の Richard の語りはちょっと面白いので解説します。
語りの中の一文に
It doesn’t need to be a good reason.
とありますが、この good reason が何を意味しているのでしょうか。この good reason とは頭が良いとか、良い仕事に就いているとか、お金持ちとか、そういう一般的でみんなが納得するような現実的な理由です。
誰かを好きになって、この人がその人だ!と思うには、上記のような理由ではなくて、例えば夜空を写真に撮るというようなことでも恋をする十分な理由になり得ると言っています。
Now, in the long run, that’s just the kind of dumb, irritating habit that would cause you to split up.
ここは面白いですね。長い目で見ると最初は素敵!と思っていた夜空を写真に撮るという事が、段々と馬鹿げたアホらしいことになり、結局はそれが別れる理由になるということです。would はそういう状況であるならば引き起こしかねない、という仮定法です。
かっこよくステージでドラムを叩く男の子に惚れてつき合ったはいいが、何年かするといつも貧乏ゆすりのように手足をバタバタ動かしたり、家のあちこちを叩き始めたりして、ドラムが一番バカみたいな楽器に思えて本当にムカつく!と思うようになって、結局別れるといった感じです(笑)。
But in the haze of infatuation, it’s just what you’ve been searching for all these years.
でも、恋していると、そういう馬鹿げた事が、「あー、俺は(私は)まさにこれをずーっと探していたんだ、、、」と思えるものだ、という事です。
in the haze of infatuation は恋心のけむの中という意味ですが、煙の中なので盲目な感じが出ています。you’ve been searching for は have been searching for ですので、現在完了進行形で、ある期間ずーっと探している、という意味です。search for は look forと同じです。
さて、これで言っていることはわかりましたが、これって、そういうものだから気をつけた方がいいよ、という戒めの話なのでしょうか?映画ではこの後は何も語らずに余韻だけを残しています。
確かにそれはそういうものだけど、僕はそれで良いと思っています。恋の始まりなんて大抵は勘違いですし、それを否定したら世の中何事も起きません。なるべくたくさんの子孫を残せるように、最初から人間は間違いを起こすようにデザインされていると僕は思っています。infatuation はそのための脳の仕掛けです。
そもそもこの物語も理想の夢のパラダイスを探すという馬鹿げた発想から始まっていますし、それで主人公の Richard にも何か大事なものが心に残るわけですから、悪いことばかりではないですね。
自分が in the haze of infatuation の中にいるのを感じたら、素直に身をまかして何が起こるのかを見てみるのも一興です。
最後に
The beach の英語の原書を紹介しておきます。この本は比較的読み易いですし、旅が好きな人にはお勧めです。出来れば東南アジアを旅している時に読みたいですね。本のリンクを貼っておきます。
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