皆さんは辞書で単語を調べる時に、発音記号は見ていますか?
例えば supreme を辞書を引くと suːˈpriːm のような記号が小さくありますが、これが発音記号です。
なぜ発音記号があるかというと、英語は日本語と違って、スペルと発音が一致していないから。
日本人は英語をローマ字読みしてしまいがちですが、実は英語のスペルはローマ字読みとは違うことが多い。
僕も最初はローマ字読みとそれまでの経験から、無理やり英語を発音していたものです。
しかし実際に英語で話し始めると、細かい発音に意識が行くようになります。
そうすると、ローマ字読みと経験だけでは正しく発音出来ないことに気がつきます。
最近はネットの英英辞典で簡単に発音が聞けますが、それでも正しい発音が良くわからない場合もあります。
やはり最終的には、発音記号を知っていると大変便利です。
発音記号は音符のようなもの
スペルだけでは発音出来ないので発音記号がある
冒頭に英語はスペルと発音が一致していないと書きましたが、これが多くの英語学習者を悩ませています。
なんとなく無理矢理ローマ字読みで発音してみても、ネイティブの発音とは全然違ったりします。
なにこれ?どうやって発音するの?
これは誰にとっても同じで、例えネイティブでもスペルだけでは正しい発音はわかりません。
例を出してみますね。
ある時ポッドキャストを聞いていたら、アメリカ人同士の会話でこんなやりとりがありました。
アメリカにThe Home Depotというホームセンターがあるのですが、
昨日、ホームデポに行ったんだけどさ、
ヘイ!それはホームディポだぞ。このクソ外国人が。ディポ!
Depotをどう発音するのか、という話なのですが、日本のローマ字読みならデポットと発音したくなります。
しかし、アメリカだとディポゥ(ˈdiː.poʊ)と発音し、最後の T は発音しません。
これがイギリスに行くと、デポゥ(ˈdep.əʊ)という発音になります。
ディポゥをデポゥとイギリス式で発音したアメリカ人が、どうしてそう発音したのかわかりませんが、同じスペルでも2種類の発音の仕方があり、どちらも間違いではありません。
他にも data はデイダと発音する場合もあれば、ダーダと発音する場合もありますし、super はスーパー(ˈsuː.pɚ)ですが、supper はサパー(ˈsʌp.ɚ)と発音します。
こんな感じで、スペルだけでは正しい発音がわからないことは多いです。
そこで英単語には発音の仕方を知るための方法が必要になり、それが発音記号なわけです。
これは英語の発音を記号で表したもので、音楽で言えば音符のようなものです。
発音記号を見ることで、その単語の細かい発音がよくわかります。
発音記号の読み方
発音記号は、読み方を知らないと読めません。
例えば先ほどの Depot のアメリカ英語の発音記号は ˈdiː.poʊ になりますが、これを実際にどう発音するかは、d や i などの各記号の発音を知らないとなりません。
diː を発音してみる
まずは単語の前半部分の diː を発音してみましょう。
diː は分解するとd / i / ː に分けられます。
d と i にはそれぞれの発音があり、それを連続させると di の音になります。
それぞれの記号の発音を聞く方法ですが、アプリが一番簡単です。この記事の下の方におすすめのアプリがあるので、ダウンロードしてください。
アプリは一つのアプリで全ての記号を網羅してはいないので、複数のアプリをダウンロードした方が良いです。
具体的な発音はアプリで確認してもらうとして、それぞれの発音を簡単にカタカナで説明してみます。
d はダァ、i はイという感じです。それほどローマ字感覚とかけ離れていないので、わかりやすいですね。
d と i を組み合わせると、ディという感じの発音になります。
ː は音を伸ばすという意味なので、組み合わせて diː になるとディーと少し伸ばすことになります。
調子に乗って poʊ も発音してみる
poʊ も同じような理屈で発音の仕方がわかります。
p / oʊ と分けられて、それぞれの発音を連続させると poʊ の発音になります。
oʊ はセットなっている発音記号で、o だけの発音記号はないようです。
カタカナで発音を説明すると、p は パっていう感じの音、oʊ でオウという感じ。
ʊ は見慣れない記号ですが、この記号だけの発音は日本語のウに近いです。
poʊと組み合わせるとパオウという感じになります。
それでも発音記号だけで発音するのは難しい
発音記号の基本的な読み方を解説しましたが、それでも発音記号だけで正しく発音するのは相当に難しいです。
そのためには発音記号を完全に熟知していないとならない。
そんな時間は我々にはないので、発音記号だけで頑張って発音しないようにしましょう。
発音を確認するときは、まずは辞書の音声サンプルを先に聞きます。
その上でなんとなくあやふやで、確認したいと思う部分を発音記号で確認するようにします。
これが効率が良い発音記号の使い方です。
designはディザイン
design という単語があります。
日本語でもデザインと発音して、ほとんど日本語のように使われています。
実はこういう外来語の発音は、英語の発音とは違う可能性が高く、要注意です。
完全に”デザイン”だと思い込んでいると、ネイティブが ディザイン と発音していても デザイン に聞こえてしまいます。
そこである時、たまたま辞書を引いて発音記号を確認してみると、dɪˈzaɪn となっていて驚愕したりするわけです。
え?デザインってデザインじゃないの?
最初に書いたように英語はスペルと発音が一致しませんし、日本のローマ字とも違います。
あらためて辞書の design の音声サンプルを聞いてみると、確かにディザインと発音しています。
他にも supreme の発音記号は suːˈpriːm ですが、supreme の re の部分はレではなく、リと発音することが読み取れます(正確には r なので、日本語のリとは多少違いますが)。
このように発音記号を横目で見ることで、耳だけでなく目でその違いが明確にわかります。
発音記号の発音を聞くためのおすすめアプリ
発音記号の発音を簡単に知るために、スマホにアプリをいくつかダウンロードしておきましょう。
疑問に思った発音はアプリを開いて、知りたい発音記号をタップして発音を聞いてみます。
ただ、アプリによっては同じ発音記号でも多少発音の仕方が違うことがあるので注意。
アプリで聞いて納得出来ればそれでいいですが、それって本当?と思うときは、別のアプリでも確認してみましょう。
アプリによっては、掲載されていない発音記号もあります。一つのアプリで全ての発音記号が網羅されているわけではありません。
いずれにせよ、複数のアプリを持っていた方が良いです。
TH や R のような、日本語には無い発音は少し集中して覚えた方が良いです。
いくつか英語の特徴的な発音を選び出して記事にしましたので、合わせて読んでみてください。
【まずこれやっとけ】英語の発音のコツ6選【TH, R, sea, earth】
アプリはたくさんありますので好きなものを選んでもらえれば良いですが、ここでは3つ選んで紹介します。
ae Pronunciation 開発元:Suragch Development
このアプリは、スクロールしなくても一画面で多くの発音記号の音を聞けるのが良いです。
右端の Double sounds をクリックすると二つの発音がくっついた場合の音が聞けます。これは何気に便利です。
他にも発音から発音記号を当てるテストもありますので、やる気満々な人は試してみるのも良いでしょう。
アンドロイド版は無料ですが、iOS版は120円です。
Double soundsをクリックすると、さらに色々な発音が聞けます。
Learn English Sounds Right 開発元: British Council
これはとても簡単に使えますが、イギリス英語用なのでアメリカ英語独特の発音はありません。
アプリを開いて、確認したい発音記号を探してタップするだけ。無料で使えます。
ただ発音記号の音だけを聞ければそれでいい、というのであれば、これが良いです。
しかし、ここに出ていない発音記号もあるので、上で紹介した ae Pronunciation と併用した方が良いでしょう。
English Sounds Pronunciation 開発元:Nikolai Emelianov
アンドロイド用だけになりますが、このアプリも悪くないです。
同じ発音が使われている単語の例や、発音の仕方を細かく図解、または動画で解説しているので発音の仕方を細かく知りたい人には良いと思います。
なぜかシュワー(əの記号 schwa)が無いのは痛いですけど。
アプリを開くと記号一覧が出て、知りたい記号をタップ。
タップすると、下記のようにその発音の詳細が出てきます。プレイボタンをタップすると音が聞けます。
さらに動画をクリックすると、下記のように、その発音を細かく解説した動画を見ることが出来ます。
ちょっと注意
初心者の段階で、発音記号を初めから全て覚えるようなことはしなくて良いです。すごく時間がかかりますし、つまらないです。
発音記号で疑問に思った部分をその都度調べていくようにすると、数年するうちに、知らぬ間に結構な発音記号を覚えていることになります。
興味を持ったものから徐々に覚えていくのが、たいした労力を使わずに発音記号を覚えるコツです。
英語学習はやることがたくさんあるので、なるべく省エネでいきましょう。
僕がいつも使っている英英辞典です。発音と発音記号の確認に使ってください。
発音記号を読む上で知っておいた方が良い記号
発音記号に付随する記号を解説します。
発音記号には色々と変な記号が付属していますが、下のリストのようなことを表しています。
ここではケンブリッジで使っている記号を解説しますが、他の辞書ではその辞書独自の記号がある場合があります。
良くわからない記号が使われていて気になる場合は、その辞書内に説明があると思いますので、調べてみてください。
ː (長母音 long vowel)
長母音はアーとかイーのように伸ばす母音で、記号は ː です。
長母音はケンブリッジだけの記号ではなく、共通の記号です。
例えば supreme の発音記号 suːˈpriːm では uː と iː が長母音があることがわかります。
u だけですとウですが、uː となるとウーと多少伸びるわけです。
他に ɔː (例えばhorseのオー) や ɑː (例えばfarmのアー) などがあります。
ˈ(第一アクセント primary stress)
アクセントは強く発音する部分です。記号は ˈ です。
この記号はアクセントが付く音節の前に付きますが、実際にアクセントが付くのは、その音節の母音になります。
音節:母音だけ、または子音と母音の音のグループ。一つの英単語には一つ以上の音節がある。英語では母音一つに対して子音が前後7つまで付随することが出来る。
例を挙げて見てみましょう。
supreme の発音記号 suːˈpriːm は、 p の前にアクセントの記号があります。
しかし、P にアクセントがあるわけではなくpriːmという音節にアクセントがあるという意味なので、実際にはこの音節の中にある母音 iː にアクセントが付きます。
実際には r と i は発音的に切り離せないので、ri の部分にアクセントがあるということになります。
ˌ(第二アクセント secondary stress)
長い単語で、単語の中に母音が二つ三つとある場合はアクセントが二か所になる場合があります。
その場合はそれぞれを第一アクセント、第二アクセントと呼びます。
第一アクセントの方を第二アクセントよりも強く発音します。
例えば、internationalの発音記号はˌɪn.t̬ɚˈnæʃ.ən.əl ですが、冒頭に第二アクセントの記号があります。
næʃの前に第一アクセントの記号があるので、næの部分を一番強くアクセントを付け、冒頭の第二アクセントはそれよりも少し弱めに発音します。
しかし実際問題、第二アクセントはそれほど気にすることはないです。第一アクセントだけ気を付けていれば、相手には通じます。
.(音節の区切り syllable division)
発音記号にある . は音節の区切りを表しています。
音節の区切りはそれほど重要ではないので、気にしなくてもいいです。
強いていつ使うのかというなら、先ほどのアクセントを付ける部分を考える場合と、歌の歌詞を作る時くらいでしょうか。
歌の歌詞は、一つの音符に一音節のように言葉を音に乗せていくので、音節の感覚はあった方が良いです。
音節内の母音が音の核になる部分なので、それを意識する必要が出てくるということですね。
ちなみに音節は英語で syllable(ˈsɪl.ə.bəl) で、英語で英語の授業を受けると、授業の中で出てくることがあります。
音節の区切りはネイティブにとっては簡単なようですが、我々日本人にとっては難しい。
ですので音節の区切りが知りたいときは、発音記号が大きな助けになります。
pronunciation の音節の区切りを知りたい場合、発音記号は
prəˌnʌn.siˈeɪ.ʃən
ですので、音節の区切りは pro/nun/ci/a/tion ということになります。
先程のアクセントの記号は、音節を区切る記号も兼ねています。
pronunciation には第一、第二とアクセントがふたつあるので、アクセント記号がある部分は、必ず音節の区切りにもなっています。
ə(シュワーサウンドがある場合あり can be schwa sound)
例えば、pronunciation の発音記号、”prəˌnʌn.siˈeɪ.ʃən“の最後に小さくシュワーの記号 ə があります。
これはシュワーサウンド (ə) がある場合とない場合があって、人や地域によるので、どちらでも良いということです。
ə の記号はシュワー(schwa)という音で、非常に小さい弱い音です。
ちなみに、pronunciation の最初の Pro の o もオではなくシュワーです。
シュワーについては、別記事を書いています。
【徹底解説】英語の発音に重要なシュワー【schwa sound】
最後に
いかがだったでしょうか?
辞書で単語を調べるときに、ちらっと横目で発音記号を見る癖をつけると良いです。
そうすると、意外な発見がある時もあるので、発音にとても役立ちます。
発音記号を覚えるのもなかなか面倒ですが、発音に関心を持つと発音記号が少し面白くなるので、自然と覚えるようになってきます。
発音記号は唯一正しい発音を目で確認出来る方法ですので、少しづつ慣れていきましょう。
Photo by Jason Rosewell on Unsplash